問い合わせ先：mahlergstav@gmail.com　　　　　　　　　2017年6月作成

港北区富士塚1-26（大塚）

戦前の地図から確認できた７箇所の塚のうち６箇所は、痕跡すら残していない。最後の港北区富士塚1-26（大塚）は、完全ではないが、塚として残っている。

新編武蔵風土記稿にも記載されている。

篠原村

大塚　村ノ東畑ノ中ニアリ　高一丈許　鋪ノ径四間許　コノ塚ノ傍ヲホレハ　タマタマ永楽銭ナトヲ得ルヨシ土人イヘリ　イカサマニモ古塚ナルヘケレト　何人ノ塚ナルコトハ今ヨリ考フヘカラス

新編武蔵風土記稿の記事だけでは、この塚が「大塚」と断定し難いが、横横浜市港北図書館で閲覧した「港北の遺跡をたずねて」の１９２頁に、大塚の根拠が述べられている。

「港北の遺跡をたずねて〜案内は石仏さん」横浜市港北区役所発行　ISBN4-89701-012-8

G-29　篠原古墳（大塚金剛神）

富士塚1-26-8

「新編武蔵風土記稿」によれば「大塚村の・・・・略・・・・考ふべからず」とあり由緒は判らない。また、この塚には次のような話がある。加藤家の先々代民八氏は、夢の中で大塚古墳から戦いに敗れた鎧武者たちが出で食べ物をくれと訴えた。翌日塚の前で供養すると再び夢の中に元気な武士が現れ、礼を述べて塚の中に消えていった。そこで民八氏と村民は塚を清掃し大塚金剛神大塚大明神として、供養を続けることとなった。

大塚金剛神碑文　小松石（真鶴安山岩）

塔高八六ｃｍ　大正元年台座　力石利用　四七ｃｍ

塔台石とも自然石

この写真では、草にまみれているが、草の中に「大塚」と記載された石碑があるようだ。

年末あたりには、大塚の「散髪」をするようである。「大塚金剛神」の石碑が顕になる。

石碑の表面右に、裏面を左に示す。

「港北の遺跡をたずねて」の記載どおり、大正元年八月の日付と、加藤民八氏の名前が刻まれている。また、台座が力石であることもわかる。

また、「港北百話」の「大塚の話」には、「最近、塚の付近を工事のため掘り返したところ、古銭が沢山出てきたため、同塚では工事を中止させたということである。」とある。

新編武蔵風土記稿の「コノ塚ノ傍ヲホレハ　タマタマ永楽銭ナトヲ得ルヨシ」の記事とも一致する。ただし、「大塚の話」にある「古銭が沢山出てきた」は伝聞なので、新編武蔵風土記稿の記事が影響した可能性もある。仮に、影響したとしても、この塚が「大塚」と広く認識されていたからこそ影響したと考えられるので、この塚が「大塚」と断定してよいだろう。

ここも眺望は素晴らしく、武蔵の国どころか、相模の国にわたって眺望が開けている。冬場の晴れた日には、富士山がはっきりと見えるだろう。この塚も、由来は何にしろ富士塚としての機能も備えていたと思われる。

冬場（２０１７年１１月末）に撮影すると、富士山と大山がはっきり写っている。

現地では、全く気付かなかったが、この塚の道路を隔てた南隣には欅の巨木があることがわかった。

これは、港北区菊名3-19（菊名老人センター前）から篠原方面を撮影した写真であるが、撮影時に全く気付かなかった。○で囲ったゴジラのような形状の巨木がそれである。富士塚1-26の塚がここから見えるはずもないが、この木の根元にこの塚があると思ってよい。実は、この写真から非常に興味深いことに気付いた。

この巨木は、ストリートビユーからも確認できる。場所は、横浜市神奈川区松見町４丁目村上医院前の綱島街道から西方向をストリートビユーで眺めた画像である。

塚の変遷

国土地理院が、「地図・空中写真閲覧サービス」というHPを公開している。このサービスでは、昭和１０年頃から現在までの日本全土の高精度航空写真を公開している。これらの航空写真から、塚の変遷を見る。

鮮明かつ一番古いものとして、昭和22年7月9日米軍撮影の写真がある。

〇で囲った塚の部分を拡大する。

塚とその周囲は、横浜市三千分の一地図　菊名（昭４）と変わらない。塚そのものも現況と大きな変化はないが、現況では北部の畑地が住宅で埋められている。

この畑地も、徐々に開発が進むが、住宅ではなく駐車場等の空き地の形態で利用されてきた。平成19年4月26日国土地理院撮影の写真では、現状のように人家で埋められたことを確認できる。

戻る

Topへ